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ウツボの仲間はウナギ目の中でも種類が多く、まだまだ未記載種の多い分類群です。
日本には現在57種のウツボ科魚類がおり(中坊ら2013)、黒潮の影響が強い和歌山県にも
24種以上のウツボが生息しているようです。

種類の多さや、飼育が比較的簡単な事などから、実は結構ウツボ好きは多く、飼育を楽しん
でおられる方も多いようです。
当館の常連さんでウツボマニアの方がおられ、ちょくちょく魚を寄贈していただきます。

今日はやや深い所に住むアデウツボというキレイなウツボをいただきました。

アデウツボ

口の中が黄色で、非常に美しいウツボです。
手持ちの図鑑では生息地に和歌山県が入っていませんが、実は記録があり、
当館にも和歌山県産の標本があります。

頂き物のおかげもあって、現在当館では
・アデウツボ
・アミメウツボ
・アミウツボ
・ウツボ
・トラウツボ
・ヘリシロウツボ
・コケウツボ
・ハナヒゲウツボ
・ハナビラウツボ
・サビウツボ
・オナガウツボ
・ハワイウツボ
・ワカウツボ
・ヒダウツボ
・ニセゴイシウツボ(順不同)
の15種を飼育、展示しています。

和歌山産ウツボ科コンプリートは難しいでしょうが、
可能な限り沢山のウツボを展示できたらいいなと思っています。

いろんな種類があって、愛嬌のあるウツボたちに会いに来て下さいね。
いつもいろんな生物を提供してくださる漁師さんから、ワイルド(天然)のスギちゃんを頂きました。
この魚は別名「黒カンパチ」などと呼ばれ、沖縄や台湾などで養殖されていますので、食用にブリード(養殖)ものが出回っていますが、これは和歌山県沖のはえ縄で釣り上げられた、正真正銘の天然スギです。
かなり美味しい魚です。


スギはスズキ目スギ科に属する魚で、見た目はコバンザメに似ています。
日本産魚名大辞典によると、和歌山の日高町阿尾では「コバンザメノコバンノトレタウオ」という、何ともそのまんまの名前で呼ばれているそうです。
残念ながら、私はその名前で呼ばれているのは聞いた事がありません。
科こそ違いますが、コバンザメと近い種類で、大型のエイや魚に寄り添って泳ぐなど、習性も似ています。

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私は受け取りに行けず、平嶋学芸員と松野学芸員が4tトラックで受け取りに。
8kgあるとかで、なかなかのサイズです。

121031.jpg

大水槽に入れると、早速ホシエイの背中に乗っかって元気に泳いでいました。
トラックの荷台ではかなり大きく見えましたが、大水槽ではさほど大きく見えないのは仕方がない。
あとは、スギのつきまとい行為に、エイが嫌にならないかが心配です。

大水槽へは特製の魚運びバックで運んだのですが、海水がこぼれてしまい、松野学芸員のズボンが水浸しになってしまいまいた。
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今日一番ワイルドだったのは、松野学芸員です!

今日の朝、水槽の掃除を終えて館内を廻っていると、小阪課長が水槽の前に座り込み
しきりに写真を撮っています。

何か面白い物があるのかな?
と思って見てみると、2匹のアオリイカがカサゴに食らい付いているではないですか!

おお!なんだこれは!

小阪課長の写真をお借りして説明しましょう。

アオリイカ

始めは、一匹のアオリイカがカサゴをくわえ込んでいたそうです。
アオリイカはエサの魚の首筋(?)に鋭い歯で食らい付き、動きを止めてからむしゃむしゃとたべるそうですが
、カサゴの鱗は硬かったのか?しばらく苦戦していたようです。

実はこの水槽には、もう一匹小さめのアオリイカが飼育されています。

この小型個体が苦しむカサゴの腹部に噛みつき、お腹側から食べ始めたところで私が通りかかったようです。

しばらく見ていると、お腹側のアオリイカは順調に食べ進め、回りにはおこぼれを狙うマアジが群がっていました。

アオリイカ


背中側のアオリイカも噛み進め、ついにはカサゴは絶命しました。

水槽の中でも、丁々発止の食物連鎖が繰り広げられます。

いのちの営みは、時に少々残酷ですが、食う側も食われる側も非常な美しさを放っているように思いました。

ぜひ、自然の中へ出かけていっていのちの営みを体感してみてください。
先日、県内の獣医さんから一本のメールを頂きました。

「持ち込まれ、死亡してしまった野鳥をそのまま処分するのはもったいないので
 標本の作り方を教えてもらえないだろうか?」とのこと。

さて、どうしよう・・・
当館には鳥の専門家が居りません。
私も、魚の標本ならばある程度のことは判るのですが、鳥となるとちょっと・・・・

そのとき、以前鳥を持ち込んでくれた学校の先生が、大学時代に鳥を研究していて
仮剥製くらいなら、作れます。と仰っていたのを思い出しました。

そうだ!この際、簡単な仮剥製講座をしてもらい、教えてもらおう!
というか、私もやってみたい!
と言うことで、先生に連絡を取り、日程を調整して本日の講座と相成りました。

獣医さんは、段ボールいっぱいの鳥を持ってきてくださいました。
やはり、いろいろと持ち込まれるようです。
このままだと、処分しなくてはいけないとのこと・・・・
博物館的には、何とももったいない話。

きっと、あちらこちらでもったいない話があるんでしょうね・・・・

今日は、手始めにペットだったウズラを仮剥製にしました。
やはり、本で見るのとやってみるのでは大違いで、いろいろと勉強になります。
さすがは獣医さん、丁寧に剥皮されています。

そのあと、フクロウをクリーニングして獣医さんはタイムアウト。
先生は猛禽を一体仕上げられました。

仮剥製
フクロウのクリーニングをする獣医さん(男性)と、指導教官(女性)。

先生も、日頃からタヌキのDOR等を見る度に、「剥きたい」衝動に駆られるそうなのですが、
やはり場所や設備の問題があるようで、なかなか出来ないようです。
その気持ち、よ~く判ります。
我が家でタヌキを解体したい等といった日には・・・・(以下略

今日は久しぶりの皮むきとのことで、大変嬉しそうでした。
声のトーンや表情が輝いてました。

本当に、お好きなんですね!

大学時代に見慣れてはいましたが、20代の女性が鳥の皮を嬉々として剥がしている様子は
なかなかシュールなほほえましい光景ですね。

仮剥製
良い笑顔です!

簡単に仮剥製標本作成の行程を説明すると、

1)鳥のお腹側に切れ目を入れる。
2)肩の所まで、皮を剥き関節を外す。
3)頸を剥き、頸骨を外す。
4)頭をくちばし近くまで剥き、頭骨の中をクリーニング。
5)尾側も剥いていき、脚の付け根で外す。尾も外す。
6)綿を詰めて出来上がり!

こんな感じです。
教わりながらやってみると、想像していたよりはシンプルな作業でした。
皮に防腐処理とかしないのは驚きでした。

仮剥製
本日の成果。このまま乾燥させます。

今回は、専門知識を持った方同士の仲立ちができ、大変有意義な試みだったと思います。
きっともっと和歌山にもいろんな専門知識を持った方や、興味のある方が沢山居られるはずです。

そのような方の繋がる「場」を提供するのも地方博物館の重要な機能だと思います。

お二方とも、今後ともよろしくお願いいたします。
2010.12.17 水路に異変?
今日、とある水路に魚の調査に出かけたところ、かなり多くの魚がけいれんしたり水底に転がったりしていました。
なかなかショッキングな映像です。

水路に異変

大きな個体にはしばらくすると復活する物もありましたが、小さな個体はかなり死亡していました。

原因を探ろうと上流を探ったのですが、結局判らず。

とりあえず、保健所にも通報し、様子を見てもらったのですがやはり判らず・・・
このように魚が浮くことは、時々あるそうです。

水路に異変

最初に見たときから30分位すると、様子も落ち着いて来たので、何かの物質が一瞬流れたのでしょうが
もっと濃い物が、長時間流れたときのことを考えると、そら恐ろしい気がします。

用水路が、だんだんと魚の棲みにくい環境になり、数が減ったところにこういった事が起こると
かなりのダメージを受けます。

身近な水環境にも、多くの貴重な魚が生息しています。
もっと気に掛けて、大事にしていただきたい物です。