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自然博物館では和歌浦湾内のマリーナシティ北側、水深約5mにある自然博物館海水取水口に水温データロガーを設置し、水温のモニタリングを行っています。
長い間同じ場所で計測することによって、環境の変化を知ることができます。
また、この情報は自然博物館だけではなく大学などの研究に役立てられることもあります。

以前は、マリーナシティの内側にある毛見崎で学芸員が一日一回表層の水温を計測していましたが、さまざまな事情により現在はロガーによるモニタリングに変更しています。
データロガーというのはなかなか便利な道具で、こちらが設定した間隔で文句も言わずにデータ(この場合は水温)を取ってくれます。
ウチのデータロガーは、一時間に一回、毎時00分に水温を測る設定になっています。

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これが、設置されている水温データロガーです。
黄色い丸いものを水中に設置し、時々データの回収のために海に潜ります。
グレーの筒状のものはシャトルといって、データを回収してくれる道具です。
赤外線通信でロガーの中に蓄積されたデータを吸い出してくれます。
水中にも持って入れるため、ロガーが設置されている場所でデータの吸い出しをして、あとは博物館でデータを読み出せばOKです。

2013-2016和歌浦湾水温変化 (640x365)

そして、これが2013年~2016年4月11日までの水温変化グラフです。
冬の低水温気には10度程度、夏の高水温期で30度弱を推移しています。
グラフから2013年の夏は、他の2年に比べて水温の変動が大きいのが分かります。
この年は冷夏か雨が多く、水温が下がったのかな?とおもって調べたところ、2013年は記録的な暑い夏だったようです。
水温の変化は、気温だけでなく海流の影響なども大きく受けますので、きっと2013年は2014年、2015年とは違った海流か何かの動きがあったのでしょう。

また、2013年度から2014年度、2014年度から2015年度で、それぞれの期間全体を通しての平均水温が0.3℃ずつ上昇していました。まだ3年の積み重ねしかないので何とも言えませんが、今後水温データを積み重ね、生物などのデータとあわせることによって、身近な環境の変動が明らかになってくることでしょう。

こういった情報は、時間を巻き戻して過去のデータを集めるわけにはいきません。
役立てるためには、普段から意識的に積み重ねることが大切なのです。
何度も新聞などで報道されましたので、ご存じの方も多いと思いますが、和歌山県有田川町の鳥屋城山から、恐竜時代の海にすんでいた巨大爬虫類「モササウルス」の化石が発見されました。

<参考>
2011年の発表
2010年の発表


 現在、来年2月の特別展「発見!モササウルス」にむけて、化石の惨状 産状レプリカを作成しています。
産状レプリカとは、化石が埋まっていたときの様子がわかるように、ある程度(おおむね片面)を掘り出した状態で作るレプリカの事です。骨の形などを研究するためには、埋まっている岩(母岩ぼがん)からすべて取り出さなくてはなりません。しかし、そうすると骨と骨との位置関係はわからなくなってしまいます。
 そこで、一度産状レプリカを作っておいてから、残りのクリーニングを行います。

 産状レプリカの制作は、東大阪の「大成モナック」さんにお願いしています。
 もともと化石のレプリカなどを専門にされていたわけではないそうですが、この度制作にチャレンジしてくださいました。

 昨日、小原学芸員とともにレプリカの制作の様子を取材に行ってきました。
 これが制作途中の脊椎骨と肋骨、前足のレプリカです。
写真6

 こんなに大きなレプリカですが、とても軽く簡単に持ち上げられます。
写真のモデルは制作担当の方です。
 前足の部分は塗装の途中ですが、それでも触らなければ本物と見まごう出来です。

写真4

 小原学芸員が、自分の体でモササウルスの状態を示しています。
右前足を体の下にして、左半身を上にして海底に横たわっていた様子がよく判ります。

写真1
 素晴らしい出来にご満悦の様子。こんなに軽いのは、素材に「発泡ポリウレタン」を使っているからだそうです。今後、レプリカの貸出や、移動、展示などで、この軽さが非常に良い結果を生みそうです。
 ひょっとしたら、これからのレプリカ制作のスタンダードになるかも?
 ちなみに、写真に写っているレプリカは、まだまだ一部分。現在わかっているだけでも、下顎のパーツや左前足、沢山の脊椎骨、後ろ足などが見つかっており、現在レプリカ製作中やクリーニング中です。

 今年度の特別展では、すべての化石のクリーニングは終わりませんが、産状レプリカはすべての化石を制作予定です。
 とりあえずは、2月からの特別展をお楽しみに!!



 
先日、1月10日(祝)、近頃何かと話題のさかなクンさんが突如ご来館されました。
さかなクン
和歌山市内で講演会(?)があった帰りだそうで、短い時間でしたが水槽を楽しげに見ておられました。
とのことです。

さかなクン

と言うのも、私はお休みだったのです。残念!

プライベート(?)でも、良いテンションだったようです。

何年か前に一度来られたときも、私は駐車場整理で話せずじまい。
どうやら、さかなクン運がないようです。

さかなクンといえば、最近クニマス発見で話題になりました。

クニマスと言えば、写真や漫画や標本でしか見たことがなかったので、素直に感動しました。
すごいですね~持ってますねぇ!

いいなぁ・・・標本欲しいなぁ・・・・
採りに行きたいなぁ・・・・

明後日はチリメンモンスターイン和歌山というイベントがあります。

大人気イベントなんですが、こういうときに役立つのが竹のピンセットです。

チリモンくらいなら金属のピンセットでも大丈夫なのですが、
ナマの稚魚や仔魚、特にレプトケパルス幼生を扱うのには、ソフトタッチな竹製が一番です。

竹のピンセットは市販されてもいますが、細かな作業をするほど精度の高いものはありません。

従って、自作となります。

それぞれ、自分の好みに合わせて竹を削り貼り合わせる・・・・単純ですがなかなか奥が深いです。

学生時代に調査航海などで長時間船に乗る時は、暇つぶしに作っていました。

今晩、家に竹を持って帰って久しぶりに作ってみようと思います。

昔入手した、いろりの煙で150年燻された煤竹(すすだけ)がありますので、それで作ってみようと思います。

また製作したら製作工程などをアップしますね~
何度かブログにも書いたと思いますが、県立高校から標本を寄贈いただいて整理を進めておりました。

以前のブログはこちら。http://wmnh00.blog31.fc2.com/blog-entry-57.html

相当に古い標本なのですが、一次情報が少なく困っておりました。
何せ、誰が作ったのかも解りません。

標本の整理自体は終わり、今目録をまとめているのですが、標本の全貌が見えたところで学校にある資料を調べさせて貰いました。

整理した所、ラベルや標本の感じから大きく二つのグループに分かれる気がしていました。

一つは、昭和12年、13年周辺。
採集場所に「紀ノ川」とある物は多いのですが、日時の記載のある物はあまりありません。
そんな中でも、昭和12年ごろに当時の3年生が採集した標本がいくつかと、なぜか「沖縄市場」で購入した標本がありました。
それははっきりと日時もあります。昭和12年7月23日 購入だそうです。

もう一つは、昭和31年の和歌山市加太 田倉ヶ崎の海水魚標本。
これはJ.Hとイニシャルがあります。

これは何とかわかりそうです。

ということで、学校に行き卒業アルバムなどを特別に閲覧させていただきました。

J.Hさんはすぐに解りました。
当時の生物部顧問の先生です。

ただ、昭和12年ごろは日中戦争勃発のころ・・・
さすがにアルバムはありませんでした。

一つでも解っただけ・・・と思っていると、別の資料を閲覧させていただけることに・・・

分厚い資料をめくること約1時間。

なんとそこには、ある先生が
「昭和12年7月29日 行幸記念沖縄動植物採集講習会 を修了したことを証する・和歌山県博物学会」
とあるではありませんか!!

この先生に違いない!!

思わず、事務室で声を上げてしまい、事務職員の方にビックリされてしまいました。

この先生は、なかなか熱心で医学部へ生理学や解剖学の研修を受けに行ったり、植物、地質鉱物など様々な研修を受けておられました。

ちなみに、行幸記念とあるのでちょっとひもとくと、第1回の行幸記念講習は昭和4年に臨海生物実習とあります。
年代からして、あの南方熊楠・キャラメル箱の行幸に当たるでしょう。

それから何度か、行幸を記念して講習が行われているようです。

昭和初期の南方熊楠たちが活躍した、生物学のアツい時代の息吹を少し感じられた気がします。

ともあれ、沖縄標本の物と紀ノ川の標本はラベルと筆跡が一致するのでこの先生の製作に間違いないでしょう。
この先生は昭和12年から、16年までこの高校に在職されたので、標本の製作年代が4年間に絞られました!

以前のブログでもお伝えしましたが、これで紀ノ川産(おそらく)唯一であろうカマキリ(アユカケ)も年代が明らかになって、ますます貴重な標本になりました。


こういうのがあると、学芸員冥利に尽きる!とおもいます。

やはり、記録をとるのはもちろん、きちんと残すというのはとても大切ですね。